2016年10月21日(金)

https://img.textfile.org/c3dbb56b6b0abcaea64776ee5dd4b1f5.png

Web連載「数学ガールの秘密ノート」では、10週ごとに新しいロゴをデザインしています。デザインといっても、結城は知識もセンスもありませんので、毎回試行錯誤しながら「それっぽい」ものを作っているだけですけれど。

結城が使っているツールはMacのPixelmator(ピクセルメーター)で、適当な元画像にイフェクトを掛けて、少なくとも自分の目には美しい(あるいは楽しい、あるいはハッとする)ものができればよしとしています。何か考えがあって「デザイン」しているわけではないので、二度と同じロゴは作れないという自負(?)があります。

たとえば、第171回〜第180回のこのロゴ「\(\lnot P \lor Q\)」は、数式をベースにしていったんLaTeX2eで組版して、それを先ほどのPixelmatorであれこれイフェクトを掛けたものにしています。それなりの美しさは作れたと思っているんですが、いかがでしょうか。美しさを生み出したのはPixelmatorのイフェクトですけれどね。

そもそも、この数式、 \[ \lnot P \lor Q \] というのをなぜ選んだかは、分かる人にはすぐわかるはず。命題論理の「ならば」に当たる数式だからです。要するに、 \[ P \to Q \] と同値な命題を描いている。私はこの数式は本シーズンのテーマである「論理と証明」の象徴的なものであると思っているので、これをロゴにしました。今シーズンの中核となる数式なので、それをロゴにするのはとても適切な話だと思うからです。ロゴって、そういうものですから。

Web連載の方は第173回(シーズン10回のうち3回目)で、導入部分の半ばというところ。ユーリちゃんが聡明なところを見せていますね。これからどんなふうに展開していくのか、とても楽しみです。私自身の作戦はあるのですけれど、数学ガールたちがどう動くかは私には予想がつきません。今回の記事も、結城がもともと準備していたものとまったく違うものになっています。

第173回 すべての人が好きなもの(前編)(命題論理と述語論理) http://bit.ly/girlnote173

来週の第174回は、結城が今週書こうと思っていたものを書くつもりですが、そんなにまっすぐことが運ぶとは思っていません。

でも、今週の第173回を読んでみて思うのですが、結城の思惑とは別にたいへんおもしろい数学トークを描いていると思うのです。私がコントロールしていないから(数学自身が次を導いているから)おもしろいものに仕上がっているのだと思います。

おや?

そうです。私のWeb連載の書き進め方と、私のロゴデザインの話には共通点がありますよね。

自分の意図や意志ですべてを行うのではない。

いろいろ勝手に進むものごとの中から、良いものを選び出している。

私がものを作るときには、そこに妙味があるようです。

コントロールするのではなく、ジャッジする。自分がすべてを作り上げるのではなく、目の前に現れたものの良し悪しを見抜く。自分オリジンではなく、作品オリジン。

結城は、そんなふうにものを作るのが好きなようですね。

Web連載「数学ガールの秘密ノート」 https://bit.ly/girlnote


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結城浩(ゆうき・ひろし) @hyuki

『数学ガール』作者。 結城メルマガWeb連載を毎週書いてます。 文章書きとプログラミングが好きなクリスチャン。2014年日本数学会出版賞受賞。

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